保育士を目指す方のためのピアノ練習術

保育士になるためには、大学や専門学校などで専門分野の勉強をし、厚生労働省所管の保育士試験に合格しなければなりません。

筆記試験に合格した方には実技試験があり、音楽、造形、言語の各表現の中から選んだものを試験官の前で披露する必要があります。

最低限保育士に必要なピアノの技術を身につけ、少しでも余裕をもって試験にのぞみたいですね。そのために重要となる「これだけは弾いておこう」という事柄についてご紹介します。

保育士試験に必要な音楽実技試験で試されること

保育士の国家試験は年2回開催され、まずはじめに筆記試験が行われます。

筆記試験の項目は9科目あり、すべての試験に合格すると実技試験に進むことができます。実技試験では、3つの表現のなかから2つを選んで臨むことが可能です。

3つの表現
  • 音楽表現に関する技術
  • 造形表現に関する技術
  • 言語表現に関する技術

そして、それぞれどのようなことを試験で行うかというと、音楽においてはピアノ・ギター・アコーディオンのなかから楽器を一つ選択し、課題曲2曲を伴奏とメロディの両手奏を行いながら歌う弾き語りのスタイルの試験を行います。

造形では、課題をもとに絵を描く試験が、言語表現においては課題をもとにして子供に向けたお話を3分間する、という内容となっています。

そして、音楽の実技試験では、保育士試験の手引きによると、以下のように規定が定められています。

実技試験の内容
  • 幼児に歌って聴かせることを想定して、課題曲の両方を弾き歌いする。(楽譜の持込可)
  • ピアノの伴奏には市販の楽譜を用いるか、添付楽譜のコードネームを参照して編曲したものを用いる。
  • 前奏・後奏を付けてもよい。歌詞は1番のみとする。移調してもよい。

ただし、すべての受験生に音楽の実技試験が必要ということではありません。

あくまでも3種の実技試験から2種を選び受験すればよいので、ピアノが苦手という方は、選ばないという選択肢もあり得るのです。

「でも、どうせなら子供のころに少し習ったピアノを保育の現場で生かしたいな…」という方もいらっしゃるかもしれません。

今回はそのような保育士試験の受験を考えていて、ピアノをどの程度まで弾けるようにしたらよいのか、どのような練習をしていけばよいのかについて、ご説明したいと思います。ご自身のピアノに合わせて小さな子供たちが懸命に歌を歌ってくれたら、こんなに幸せなことはありませんよね。

ぜひ、保育士さん向けのピアノ練習のコツを学んでいただき、試験や実践でその成果を生かしてください。

試験や園でのピアノ実技とは

保育士の実技試験で音楽を選択する、しないにかかわらず、実際の保育の現場では必ずと言っていいほど、ピアノの演奏がついてまわります。

朝のお歌から始まり、保育中の子供向けの歌の伴奏、帰りのご挨拶のカデンツ(和音で弾くことをカデンツと言います)まで、その演奏内容は多岐にわたります。

また、入園式や入所式、卒園式などでは、保護者の前で演奏する機会もあることでしょう。実際にこども園や保育園では、保育の時間内にピアノの音がそこかしこの教室からもれ聞こえてきます。

行事や用事で子供の園を訪ねると、必ず感じるのは、「上手に弾けていてすごい!」と思う演奏と、「あれ?そこの和音、ちょっとメロディにあわないかな…?」という演奏レベルの差です。試験の項目に音楽を選択しなければピアノの試験を受ける必要はなくなります。

このため、同じ園のなかでも、レベルが高い先生と低い先生にわかれてしまう事情はよく理解できます。ただ、子供たちは必ずといっていいほど、ピアノの音をよく聞いています。

先生の伴奏が止まってしまってもきちんと合わせようとしますし、「ちょっと変な音だな…」と感じながらも一生懸命歌を歌ってくれるのが子供のかわいらしいところです。それほど、先生のことが大好きなのですね。

そんな子供たちの気持ちを無にしないためにも、少し努力して、ピアノ伴奏をひととおりできるようにしませんか?

最低限これだけできれば、お歌の伴奏はできる

最低限必要な保育の現場でのピアノ技術は以下のレベルではないでしょうか。

簡単に習得できる方法

左手は3和音か、もしくは根音と5つ上の音(五度といいます)を弾く2和音での伴奏、右手はメロディラインをそのまま弾いてしまう。

これが一番手っ取り早く、簡単に習得できる方法です。
それでは、実際にどのような練習をすればよいのか、ご説明します。

左手は2和音の練習をする

左手は、できるなら2つくらいは音が欲しいところです。

右手でメロディラインを弾いているので、1音だけでは響きが確立できない上、ベースの音が子供たちの声にさえぎられて聞こえづらくなるからです。

このため、ハ長調やト長調、ヘ長調あたりまでの範囲で、2和音を弾く練習をしておきましょう。和音には種類があります。子供向けの歌の伴奏では基本となる以下の3種類を最低限覚えておきましょう。

ハ長調の場合

一度の和音…ド、ミ、ソ

四度の和音…ド、ファ、ラ

五度の和音…シ、レ、ソ

ト長調の場合

一度の和音…ソ、シ、レ

四度の和音… ソ、ド、ミ

五度の和音…ファシャープ、ラ、レ

ヘ長調の場合

一度の和音…ファ、ラ、ド

四度の和音…ファ、シフラット、レ

五度の和音…ミ、ソ、ド

この基本の3和音がきちんと左手で一気に押さえられ、曲にも活用していけると良いのですが、難しという方は、真ん中の音をそれぞれ抜いた状態で、小指と親指の2本を使い、弾く練習をしてみてください。

2音を弾くときには、だいたい手を広げる幅がどの調でも同じくらいになります。ただし、ト長調の場合だけは、5の指(小指)はファのシャープを弾くため黒鍵を押さえなければなりません。

少し鍵盤の奥のほうへ手のひら全体を移動させて、5の指で黒鍵を弾き、親指は白鍵のレにのるよう手の位置を調節し、弾きやすい場所や指の形を探してみましょう。

過去の課題曲を使って、右手でメロディラインの練習をする

平成30年度の課題曲は「おかあさん」と「アイアイ」とのことです。

「おかあさん」は優しい感じを表現し、「アイアイ」では少し快活な感じでメロディを弾けるとなおさら良いと思います。

メロディラインの練習は、数をこなすしかありません。その時、どのような練習方法を取り入れると効率よく練習できるのかをご紹介します。

まずは音をきちんと五線譜上で読む

譜読みができないと、どんどん新しくなる子供のお歌についていけなくなる可能性があります。このため、最低限楽譜で音が読めるようにしておきましょう。

効果的なやり方は、左手で音符を1つずつ追いながら、右手でその音を弾く…という作業です。

音符の種類とそれぞれの長さ、音の高低の理解は最低限必要となりますので、四分音符、八分音符、二分音符、付点二分音符、全音符とそれぞれの休符、弾き始める前には必ずト音記号の確認と何拍子かという確認をするという基本動作を身につけましょう。

また、音符の読み方にはコツがあります。

ト音記号の書き出しである黒丸は、「ソ」の五線譜上の位置を表しています。真ん中の「ド」はご存知のように、五線譜からさらに下に線を書き足し土星のような形をしているものです。

その3つさえ頭に入っていれば、あとは左手で五線譜の上から音を読んでいくことができます。少し時間がかかる作業となりますが、基礎をしっかり身につけておくと、読譜のスピードがだんだん上がっていきますので、譜読みの際は根気強く左手を登場させて読譜を進めていきましょう。

声に出して音を歌う

メロディラインの音がわかったら、その時点で、鉛筆で直接音符の上にカナを書き込んでしまっても良いと思います。

ただしすぐ消せるように、鉛筆を使うことだけは守りましょう。

子供のお歌は大体が大人世代でも知っている比較的優しいレベルの曲が多いのではないでしょうか。メロディラインを声に出して歌い、実際のピアノの音と狂いはないか、確認しましょう。

右手で弾きながらメロディを歌う

つぎに、弾き語りの試験や園での実技に対応できるよう、右手でメロディラインを弾きながら、歌うという練習をします。

少し難しくいつも止まってしまう場所は、スルーせずにきちんと向き合い練習します。丁寧に練習するとすべてが力になってご自身にプラスに作用しますので、根気強く続けてください。

最後は両手奏+歌にチャレンジ

ここまでしっかりと練習してきましたので、最後は両手奏をしながら歌うことにチャレンジしましょう。

一度目は最初から最後までをとおし、その後できなかった部分や、2和音の響きとメロディが合わないと感じる部分を取り出して、そこだけ何度か練習します。

一つ一つの行程をきちんと経ることによって、本番でも間違いづらい演奏技術が身につきます。ぜひ根気強くチャレンジしてください。

子供が「先生の伴奏で歌いたい!」と思ってくれるような保育士になろう

ここまで、保育士の方に必要なピアノ技術の練習方法についてご紹介しました。

子供が好きで保育士になろうと思う方々は、きっと心の優しい素敵な若い方だと思います。子供たちはそんな優しい先生に会えることを園で心待ちにしているでしょう。

ピアノも最低限、メロディに合う伴奏で弾き歌いできるようにして、実際の園での生活でも楽しんでお歌の時間を迎えられるように練習をがんばりましょう。

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ABOUTこの記事をかいた人

武蔵野音楽大学卒業後、(財)ヤマハ音楽振興会に就職。

在職中はヤマハ音楽教室の講師研修やテキスト作成の補助業務、会員誌の編集などを担当。出版部門に出向後は輸入楽譜の日本語ライセンス版や新刊情報誌の編集に携わる。

現在は指の病気のため講師業を休職中。「ピアノを弾いてみたい…」と願う方の一助を担えたらと思い、初心者の方にもわかりやすく丁寧に執筆しました。